2013年5月2日木曜日

ジェフ・ベゾスはウェブサービスの事業家としては最も学ぶことが多い人な気がする。

ワンクリック―ジェフ・ベゾス率いるAmazonの隆盛/リチャード・ブラント

ジェス・ベゾスはそのメディア露出の少なさから過小評価されている、あるいはあまりすごさが伝わっていない事業家である。個人的には彼の事業展開はネットの世界では最も学ぶことが多い人だと思う。どのような起業家の伝記を読んでも、成功の最も大きな要因はタイミングと運なのではないかと思うことが多い。そんな中でベゾスだけが意図の戦略性の高さと実行力で群を抜いているように思える。




確かにベゾスに運がなかったわけではなく、運も強い人だ。あの時期に大学を卒業し、1990年からデビッド・ショーのD・E・ショー(おそらく2社目)で裁定取引のコンピューター通信システムの開発者としてキャリアをスタートさせたことは彼のつかんだ大きな幸運の一つだろう。2000年代なら、こういう仕事の価値を感じる人はたくさんいる。けれど、時は80年代後半である。解説で滑川さんはこう書いている。

(ベゾスの1994年の起業は)W3C(ウェブの標準化団体)の創立より3ヶ月も前だった。ウェブとインターネットがこれほど巨大な社会的インフラになるとはゲイツもジョブスも含めて、まだ誰ひとり気づいていない時代だった。オンライン販売という仕組みに巨大なビジネスチャンスを見てとり、かつ、それを大規模に実現するだけの通信システムの開発能力と資金力、カリスマ的組織力をもっていたのは世界でベゾスただひとりだったのではないだろうか。(P270)
<ベゾスの経営哲学(P253)>
最後にベゾスの経営哲学がまとめられているので、メモ。

1. 徹底的な顧客第一主義

これ、ほとんどの人が同意するし、当たり前のことだと思いがちだけど、実践するのは結構難しい。どうしても目先の利益に目がいき、顧客視点を忘れてしまうこと、経営の前線にいればいるほど陥りやすい罠だ。お題目としては顧客第一主義を掲げるけれど、毎日の言動がそうではない、という経営者のケースは結構あるように思う。対してベゾスの視点はいつも顧客にあり、彼らが望むものを手触り感があるレベルで提供していく。これを徹底的に競合より先に思いつき、改善していく。ベゾスは下記のように表現している。
「業界2位の10倍になるには、実は10%だけ優れていればいいのです」(P258)
2. 発明、再発明を粘り強く続けること
これについては、この本よりイノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press) の方がよいかもしれない。会社とサービスがイノベーティブであるためにベゾスが様々な工夫を組織や仕組みに対しても、凝らしていることがわかる。

3. 長期的に考えること

この例として筆者はベゾスがアマゾンとは別にやっている会社で宇宙旅行を安価い提供することを目指すblue origin( http://www.blueorigin.com/)を紹介しているけど、なんかこの説明はしっくりこない。参考にならない、というべきか。ベゾスの長期的な視野で少なくとも実績があって証明されているのは、2000年代半ばくらいまでのネット企業のめざす姿としては定石であった下記の勝ち方を、1990年代からアナリストからの批評をものともせず行い、実績を出したことではないか(実際これができた企業はすくない)。
アマゾンが先鞭をつけた、利益を上げようともせず急速に成長するスタイルが、事実上、すべてのインターネット企業のめざす姿となる。(P135) 
4. 毎日が初日
これはベゾスが自らの会社を完成品だと考えることなく、新しい課題に取り組みイノベーションを起こして行こうとしている態度のことを言ってるらしい。

<その他メモ>

・会社の設備や従業員の給与についてはかなりコストを押さえている。
・採用は、5年前に入った社員が、あのとき入れてよかった、今なら入れると思えない、と思うくらいに毎年基準を厳しくしていった
・起業時からスケール化を想定してオラクルを導入していた
・カファンはアマゾンが早い段階で成功できた理由の一つが、書誌情報のハイパーテキスト化が大きかったと思っているらしい

この本は新書程度の内容であるため、読み応えはかなり薄いと言わざるを得ないのだけれど他にベゾスについて知るのにすごく良い本がある訳ではないので、読んでみた。彼の経歴を知ることができる。

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