2013年12月13日金曜日

プライシングを体系的に学ぶ



プライシングに関する本を何冊か読んできたのだけれど、初心者にとってこの本ほど実務的な内容がまとまっている本はないのではないかと思う。すでに知っていることも多いし、感覚的にそれはそうだよね、と言いたくなるようなことも書いてあるのだが、詳細に言語化されているのはすごい。各現象の説明の背後には経済学の理論が使われていることも、この本の分かりやすさに貢献している。研修のテキストが元になっているようだが、この研修を受けさせてもらった人はラッキーだ。また、本の最後にのっている文献も参考になる。


たとえばあなたが何か新しい商品を売り出そうとしていて、そのプライシングに思いを巡らせている時、次の2つの効用があることだろう。


1. これは普通に考えるとやらないほうがいいよね、ということのチェック

e.g. 資本力がないのに低価格戦略で戦おうとする、など
2. コストから考える以外のプライシングについて具体的な設計方法がイメージできるようになる

この本と同じレベルの精度で広告についてもだれか書いてくれないかなー。


ただ、この本に書いてあることはどれもすごく大事なことなんだと思うのだけれど、構造化がされていないため、頭に定着しにくい。したがってこのエントリーでは内容をなんとなくまとめてみる。

2013年11月23日土曜日

コクとは何か(2)おいしさを作り出すのは食べ物そのものとは限らない

コクと旨味の秘密/伏木亨

前回のエントリーでコクの第一層(コアのコク)、第二層部分については書いたので、第三層について触れてみたい。伏木さんはコクには作る人や食べる人の精神性が反映される部分があると言い、それを第三層のコクと呼んでいる。

3. 第三層のコク
第三層のコクにも食の味わいを入れるとすると、極限にまで要素を削り取って味わいの中に精神性を重視したコクが該当するでしょう。実体にこだわらない精神性が第三層の特徴で重要です。例えば料理人が腕によりをかけた吸い物などです。日本の料理人が目指してきた究極のコクだと思います。もはや抽象のコクと言えます。味わう者の精神世界に大きく依存するコクです。 上品な吸い物は、それ自体の栄養価は高くありません。濃厚なコクがあるとも言えません。しかし、余分なものが削ぎ落とされたものの中にコクの純粋な形が感じられます。 微かな手がかりや痕跡です。感じる側が訓練されてこそ隅々まで味わえるようなものです。いわば、修練のコクとも言えます。修練をしていない者には「何だ、この薄味の吸い物は。おーい醤油をくれ!」と言いたくなる味かもしれません。しかしある程度和食に通じた人は、こういうギリギリのところに何とも言えないコクを感じるわけです。(P142)

2013年11月18日月曜日

コクとは何か(1)おいしさを作り出しているもの

コクと旨味の秘密/伏木亨

コンビニ食と脳科学-「おいしい」と感じる秘密 (祥伝社新書170) によると、コクという言葉が食品に使われ始めたのは1980年代くらいからだという。

「コクのある」という表現は.早川文代氏の著書「食語のひととき」によると、語源は古代中国にあるものの、日本で一般大衆に気軽に使われるようになったのは1980年代以降です。具体的には、アサヒビール「スーパードライ」のテレビCMで「コクがあるのにキレがある」と使われてからと言われています。(「コンビニ食と脳科学」P36)
この本は、なんだか曖昧な「コク」という概念を科学的な研究も踏まえながら説明しようとした、意欲的なものである。


2013年11月11日月曜日

あなたのビジネスモデルは9つの質問に答えられるか

儲ける仕組みをつくるフレームワークの教科書/川上 昌直 

しばらく前に、ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書がすごく流行ったことがあった。項目が階層化されていないことと、網羅性を感じられないことから中々頭に入らず、なんだかすごく気持ち悪い思いをしたことを覚えている。イラストとかキャッチーで素敵な本なのだが、ロジックが何となく甘い本だ。


その点、この本はその気持ち悪さがない。加えて、別のビジネス書が一冊を使って説明しているようなことを、さらっと加えてさらにそれをビジネスモデル全体の中に位置づけまでされている。今までのところ、ビジネスモデル関係の本の中では最も分かりやすい本だった。よく言われていること、既に知っていることも含めて改めてメモしておきたい。


2013年10月26日土曜日

アメリカの消費者はこの20年でその購買行動をどう変化させてきたのか

今週のマッキンゼーのニュースレターが面白かったので紹介してみたい。「How retailers can keep up with consumers; The retail industry is more dynamic than ever. US retailers must evolve to succeed in the next decade.」というタイトル。

下記の図にグラフにあるように、過去20年間の結果はWal-Martの一人勝ち具合と、それ以外の会社の入れ替わり、また10位にAmazon.comが入ってくるという不気味な感じが一目で分かる。


これから5年の小売業界の変化はこの100年に起きたものよりも大きい、という人たちもいる。では、そういう変化の中で、生き残りのために小売業はどのように自らを変化させていくべきだと彼らは分析しているのだろうか。


2013年9月17日火曜日

戦略論からみた中国の政策は自滅的である

 自滅する中国/エドワード・ルトワック (著), 奥山 真司 (翻訳) 

 戦略を勉強するにあたって「地政学」という学問は非常に多くの示唆を与えてくれる。歴史を振り返ると、人間という生き物はかくも変わらないものか、という思いを新たにする。恐怖、希望、同情、共感、好意、傲慢さ、嫉妬など人間の感情はしごく
普遍的なもので、それが故に私たちは往々にして真実を見ることができないのだと思う。

エドワード・ルトワックは戦略は政治よりも強い、という。中国の覇権を求める最近の行動が周辺国に対して脅威を感じさせ、団結させる効果をもたらすことで相対的に中国の力をそいでいるとし、これを彼は戦略の「逆説的論理」と呼ぶ。



2013年9月4日水曜日

飲食店の売上貢献度は立地が7割、中身が3割

最新版 これが「繁盛立地」だ! ―人が集まる、だから儲かる/林原 安徳

非常に読み応えのある本。店舗を探している人は読むと学べることが多いはず。元日本マクドナルド出店調査部チーフの筆者が体系的に立地に関する考え方を教えてくれる。どんなことにも論理的な道筋をたてて検討することで見えてくることがある。優れた直感やクリエイティビティは突然訪れるものではなく、論理的な考察の先にやっと到達できるものだと思う。自分の専門について専門外の人の思いつきを聞いて「うーん」と思った経験がある人も多いはずだ。素人の創造的なアイディアに価値はなく、玄人の素人発想からくるアイディアにこそ価値を生み出す創造性が含まれている。だから、飲食業素人である私は、地道にこういう本を読んで勉強することにしている。


この本を読んだおかげで、何気ない町並みを違う視点で捉えることができるようになった。サイゼリアの正垣さんがおいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」に他社の店舗の視察について

実際に店を視察するときは、「商品」「設備」「作業」「立地」の4分野について、それぞれ100項目ずつ書き出していくことをお勧めする。(P41)」
と書かれていたが、この本にあるような体系的な知識を持つ事がチェック項目作りの前提となるだろう。

2013年8月24日土曜日

日本語が亡びるとき/水村 美苗

 日本語が亡びるとき/水村 美苗

最近、語学学習のことを考えていて以前に読んだこの本を再度読んでいる。以下転載。 

帰国子女で、自身も小説家であるこの人は、日本文学がとても好きなのだなあ。その愛情故に、日本語というものを介して成熟してきた日本近代文学が、将来英語という普遍語の台頭の前に、その魅力を維持する十分な使用頻度を人々の間に持つ事をできずに衰退していくであろうことを嘆いている。言葉は修辞学的機能をもつものなので、翻訳された文学は、もはや別ものだとする。たとえば漱石のよさは日本語で読まないとわからない。


2013年8月14日水曜日

日系飲食店のSNSを活用した海外展開事例- Toronto, Kinton

トロントではラーメンが大流行りである。お寿司屋さんであったはずのお店が「ラーメン始めました」みたいなサインを出していることも珍しくない。ラーメンだけでなく日本食自体がほんとに流行ってるな、という感じだ。トロントのラーメン屋さんはいくつかあるのだが、その中の一つKintonを事例に海外に日本食が出て行く際のSNSの活用について考えてみたい。

Kintonは2013年8月12日現在でFacebookの「いいね!」が4,815、twitterのフォロワーが5,388となっている。トロントには同等クラスのクオリティのラーメン屋さんとして認識されているお店が他にも数件あるのだが、競合と比較してみても圧倒的なSNS上での注目度の高さとエンゲージメントの高さを誇る。Kinton Quest というFacebookアプリもあるみたいだが、最近はやる人もあまりいないんじゃないかと思われるので、 Kintonのfacebook上で展開されているイベントとしてKinton Bowlerに注目してみたい。



2013年8月10日土曜日

飲食店の目標来客数のKPI設定と来客増加施策

「とりあえず、生!」が儲かる理由 飲食店の「不思議な算数」/江間 正和

飲食業の事業構造を理解する上でランチは儲からない 飲み放題は儲かる 飲食店の「不思議な算数」がとても良かったので、これも読んでみたけれど学び感は少し落ちた。ただ、むしろ飲食業に携わる人というより一般の人がどうやってよいお店を見つけるのか、という観点で読むとすごく勉強になるのではないか、と思った。

来店客数の見積もりをどう考え、その増加のためにどんな施策を打つのか、という点については前回の本よりもきちんと書いてあってよい洞察をもらえたので、そこの部分についてメモをしたいと思う。


2013年8月9日金曜日

飲食業などの従来型の産業とハイテク及びネット産業の本質的な違いは何か

起業に関する記事と言えば、ネット界隈の記事しか見ない昨今である。参考になるので定期的に読んではいるが、飲食などの従来の産業とネットの違いは何だろう、ということを考えていた。産業が違っても共通に通用することと、そうでないことを見極める必要があるからだ。これを「独占的レント」という概念を使って説明してみたい。

クルーグマンがProfit without productionという記事を書いていて、下記のように言っている。
The most significant answer, I’d suggest, is the growing importance of monopoly rents: profits that don’t represent returns on investment, but instead reflect the value of market dominance. Sometimes that dominance seems deserved, sometimes not; but, either way, the growing importance of rents is producing a new disconnect between profits and production and may be a factor prolonging the slump.(最も意味のある答えは、ますます重要になってくる「独占的レント」である、ということだ。利益は投資に対するリターンを表しているのではなく、市場における占有度を反映している。その独占は相応の価値のある場合もあれば、そうでないときもあるが、どちらにしても重要度を増す独占的レント(*1)が「利益」と「製造」の間に新しい断絶を生み出しており、それが長引くスランプの原因になっていることも考えられる。)

2013年7月21日日曜日

日本マクドナルド原田氏:戦略実行には順序がある

成功を決める「順序」の経営/原田泳幸

経営難にあるマクドナルドのような企業をまかされたら、あなただったらどうやって立て直すだろうか。誰でもわかるのは、客数×単価=売上なのでこの両方を上げることができれば売上が上がるのだが、単価の上昇と客数の上昇はトレードオフの関係にある。特にマクドナルドのような業態ではこれが顕著なはずだ。(一方、高価格帯のお店では単価の購買への影響が一定の価格までは逆相関になっていたり、あまり影響がなかったりする)では、この矛盾する要求をどう達成していくのか、ということが経営者の腕の見せ所なわけだが、原田さんは各戦術の順序(シーケンス)を正しくすることでこれを解決していく。

2013年7月19日金曜日

右翼と左翼の違いって何だろう

トロントの友人に「日本人って中国人と韓国人に嫌われてるんでしょ?」とか「右傾化してるの?」とか聞かれて何と応えるべきか少し迷ってしまったので、このことについて少し考えてみた。

読む哲学事典/田島正樹

< 左翼と右翼はどこで対立しているのか>
左翼と右翼の定義はあるようで曖昧だ。一般的に右翼と認識されるような人たちと、左翼と認識されるような人たちが政策的に同じ事を言っていることもある。彼らの違いが政策ではないとしたら、違いはどこにあるだろうか。田島正樹の「読む哲学事典」を使って考えてみる。


2013年7月16日火曜日

食品の「経済的な価値」と「生物学的な価値」のギャップが発生する理由

私は市場の力を信じているし、市場経済こそが現在の世界を現在のように足らしめている最も重要な仕組みだと考えている。けれど、ポール・ロバーツの「食の終焉」の中に出てくる、次のフレーズのことが頭から離れずにいる。
食の終焉/ポール・ロバーツ
今日の最大の問題は、そのズレ、すなわち、「食品の経済的な価値」と「生物学的な価値」の間のズレにあるのではないかと言いたいのである。(P24) 
このところ、この言葉のことをずっと考えていて「食品の経済的な価値」と「生物学的な価値」の間にズレが発生してしまう理由を「情報の非対称性」(information asymmetry)という言葉で説明してみようと思う。

2013年7月6日土曜日

事業家になるのにコンサルティング経験は本当に役に立たないのか

不格好経営―チームDeNAの挑戦/南場 智子

この本、おもしろい。南場さんが人間味にあふれた素敵な人で、きちんとチーム作りをしながら会社を成長させてきたのがよくわかる。成果を出せる人なら、こういう人の下で働くのはきっとすごく楽しいはずだ。実際の意思決定の瞬間についても勉強にもなる。多分いろんな人がすでに書評を書いているはずなので、ここでは「コンサルティングファームで働くということが、事業家として役に立つのか」ということについて書いてみたい。私はまだ事業家としては駆け出しなので、将来違う風に思うかも知れないが、今の自分が持っている仮説を文章で残しておこうと思う。

2013年7月2日火曜日

Google 調査で明らかになった採用活動の秘密(ビッグデータは大して役に立たないかもしれない)

ニューヨークタイムズがGoogleの人事管理部シニアバイスプレジデントであるLaszlo Bockにおこなったインタビューが面白い。

「ヘッドハンティングにおいては、ビッグデータは大して役に立たないかもしれない」と題されたこの記事は、Googleが採用活動において行ってきたビッグデータを使った調査結果が報告されている。

http://www.nytimes.com/2013/06/20/business/in-head-hunting-big-data-may-not-be-such-a-big-deal.html

コンピテンシー面接マニュアル 川上 真史、 齋藤 亮三


2013年6月27日木曜日

「事業会社の始めた投資組合はカスなので組まないほうがいいよ」

ユニオン・スクエア・ベンチャーズ創業者の一人であるフレッド・ウィルソンがCVCからの投資を如何に避けるべきか、についてインタビューの中で熱く語っている。彼のブログはVCの現場に近い小さな気づきがたくさん書いてあって、とても勉強になる。ユニオン・スクエア・ベンチャーズはニューヨークにあるVCでNYのテック系ベンチャー生態系の中心的な存在だ。過去に投資した会社はTwitter, Tumblr, Foursquare,Zynga, Kickstarter,10genなどがある。


かなり簡単にだが、訳をしてみた。(急いでやったので間違えがあるかも)

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「僕もあれからいくつか失敗をしてきた。たとえば、事業会社の投資組合と一緒に投資するとかね。絶対、絶対、絶対、絶対、死んでも、なにがあっても、どんなことがあっても彼らと一緒に投資しちゃいけない。絶対だめ。」


2013年6月20日木曜日

自分の頭の中を正確に伝える能力がない人の4つのパターン

 とりあえずの国語力/石原大作

「自分の頭の中のことをできるだけ正確に伝える」ということは、簡単なようでとても難しい。


前職で論理的に考えを表出することを徹底的に鍛えられた。そのことの価値を十分にわかってきたつもりだけど、役職が上がるほどこれに気をつけていないと組織全体の生産性を大きく毀損してしまうのではないか、ということを特に思うようになった。かつ、問題は論理性だけではない。頭の中が整理できていてもそれを伝える時に変なことになってしまう人が結構いる。そしてコンサルタントの仕事には、考えをわかりやすく表出することに慣れていない上級管理職の考えを言葉として整理してあげることも含まれる。そこにお金を払ってもらえるのはよいが、人が介さないとわかりやすい指示/メッセージングができない、というのはやっぱり効率が悪い。


伝える力が低い、という人には下記二つの原因がある。

※ここで「伝える」ということの意味合いは、論理構造を相手にわかりやすく伝える、という定義とし、感情を感情として伝える、という意味は除く(これもとても大切なことだけど)

1. 論理的に考える力が弱い 

2. 言葉の使い方に厳密さがない

伝える力が弱い人は1. もしくは2. のいずれかができないか、あるいは両方ができない。1. については問題意識も一般的に高く「ロジカルシンキング」とか「ピラミッドストラクチャー」とか、「MECEになってないよ、それ」というツッコミとか、仕事をしてて聞かない日はないような気がする。書籍もたくさん出ている。


一方、「2. 言葉の使い方に厳密さがない」という事象については結構見逃されているように思う。しかし
おそらく、「2. 言葉に対する厳密さ」の欠如は「1. 論理的に考えること」の精度にも大きく影響を与えているはずだ。したがって「2. 言葉の厳密さ」 について少し考えてみたいと思う。



2013年6月18日火曜日

値付け(プライシング)における3つの合理的な方法論

ビジネスについてあなたが知っていることはすべて間違っている/アラステア・ドライバーグ

プライシングについては昨日の記事でそのパターンをご紹介したが、本書は経済学的な観点からその本質的な意味を説明してくれている。

著者は最も効率的なプライシングの要点は下記だとする。
すべての顧客を個別に扱い、提供されるものに対して彼らがどれだけの価値を見いだしているかを正確に知り、それぞれの顧客に請求する料金は他の顧客に知られないようにする。この理想にできるだけ近づける価格戦略を考案する(P56)
つまりはこれ、経済学でいう需供曲線の均衡点でプライシングしましょう、ということなのだが、現実社会でこれを正確に把握することは難しい。しかし逆に考えれば、全てのプライシング手法は上記を把握するためのコスト/デメリットとメリットとの間にあるはずだ。


2013年6月17日月曜日

値付け(プライシング)は経営そのもの

スマート・プライシング 利益を生み出す新価格戦略/ジャグモハン・ラジュー, Z・ジョン・チャン 

経営において経営者が自社の収益性を高めるためにコントロールできるレバーは4つしかない、と著者たちは言う。その4つとは、「価格」「販売数量」「固定費」「変動費」である。これらはもう少し整理すると下記のように表現できるように思う。




このうちの「単価=価格」が本書のテーマなのだが、小さな利幅の繰り返しで利益を積み上げる飲食や小売り業にとっては、特に生命線とも言っていいテーマだ。本書はこのプライシングにおいてのパターン化を手助けしてくれる。
書籍の評価をする際に、このパターン化を容易にしてくれるかどうか、がひとつの指標となりうる。経営者の書いた本は具体性と視点の多様さという点において非常に勉強になる。一方、この本のように学者が書いた本は事例をパターンとしてすでに提示してくれるので、パターン化は容易だ。
経営効率の上の図と、下記にまとめたプライシングのパターンを見ながら、戦略を考えてみると経営効率を上げるためのアイディアが浮かんでくるかも知れない。

※このモデルを飲食業に当てはめて考えると、飲食の業態というのは多くが1. コストプラス法、2.スキミング(高級レストランなど) 、3. 競争に基づく価格設定、4. 需要に基づく価格設定の伝統的な4つの視点でプライシングされていることがわかる。5.〜12.のプライシングの方法を飲食の業態に当てはめると・・・と考えることで新しい飲食のビジネスモデルを考えるネタになる。


2013年6月16日日曜日

書評:サイゼリヤの至った境地-徹底的な改善の先にある効率性を飲食業で実践する

おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ/正垣泰彦

うーん。この本、学べるポイントが多すぎる。特にプライシングについては秀逸。プライシングのみならず、経営に対して、全体的にかつ個別事項に関しては極めて細かくアプローチすることで経営効率の飛躍的な改善を図ると同時に、そこから競争優位性を生むことができるという王道をやりきった人、という印象。

食品産業のあり方として地産地消のものを食べよう、正当な価格を農家に支払おう、という新しい哲学が一部で台頭してきていて、それとは相容れないものだけれど、サイゼリヤの事例は彼らにとってもその全体のシステムを設計するにあたって有益なものだと思う。好き嫌いはありそうだけど。

2013年6月11日火曜日

成果を上げるときのインプット(読書)の価値について

本を読むという行為の成果を求めない、というのが本ブログの主旨ではあるのだけれど事業戦略を考えるにあたっては、極めて有用であることを実感しているので簡単にメモをまとめておく。

大学時代に、ショーペンハウエルの下記の本を読んだことがある。
読書について/ショーペンハウエル

ベゾスが井深さんに学んだこと-自分の会社以上のものを、会社のミッションとして据える

World Changers: 25 Entrepreneurs Who Changed Business as We Knew It
Amazon のベゾスに関する書籍を探していてたどり着いた。25人の起業家の物語が簡単に書いてある。この本は萎えたときに「あの人もこの人も、あんなに、こんなに大変なことを乗り越えたんだなー」と思って自分を鼓舞するためには役に立つかも知れないが、実務的なことを求めて読む本ではない。

ただ、ベゾスがソニーの井深さんのミッション設計を参考にしていた風な発言が書いてあったのでメモ代わりに書いておく。

2013年6月6日木曜日

これまでにAmazonでどれくらいの買い物をしたか

いままでにどれくらアマゾンで買い物したのか。
下記のサイトでこれを自動で計算してくれるコードが紹介されている。


2013年6月5日水曜日

書評:飲食業の事業構造を理解するのに非常に優れた本。

ランチは儲からない 飲み放題は儲かる 飲食店の「不思議な算数」/江間 正和 

これは飲食業でこれから独立開業する人は必ず読んだ方がいい本。なんて親切な本なんだー。おそらく、普通のビジネスオーナーはこういうことを自分のお金でリスクをとって開業した後に、痛みと一緒に学んでいくのだろう。そして飲食店を利用する側の人も読んでおくと彼らを評価する軸ができるかも知れない。
飲食業についてビジネスモデルを理解しようとした時に、エクセルのモデリングに慣れた人なら数字を使ってその構造を解き明かすことができる。しかし、その際に困るのが未経験の場合、「何にどれくらいお金がかかるのか」ということがわからないことだ。もし仮にそれがわかったとしても、それぞれにどれくらいお金を使うのが適切なのか、業界の平均的な水準は何なのかを調べるのは、難しい。著者は住友信託で5年間働いたあと、自分のお店を新宿にもち、その経験を生かして飲食業へのコンサルティングを手がけている人だ。異業種から参入したからこその説明の仕方を、随所に見ることができる。


2013年6月1日土曜日

書評:俺のイタリアン、俺のフレンチは事業開発の優れた事例

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方/坂本孝

BOOKOFF(ブックオフ)の創業者で、現在はバリュークリエイトの経営者である坂本氏の本。文体は話し言葉をゴーストライターがおこしたんだろうなー、と思える本なんだけど、とても面白かった。そしてこの人も稲森さんの盛和塾にに傾倒した人なんだな。盛和塾については「宗教か!」みたいなツッコミもよく聞くけれど、これだけ多くの経営者に影響を与え、彼らが困難に対峙するときに彼らを支えてきた貢献はとても大きいものだと思う。そもそも、経営におけるビジョンの浸透は、宗教における教義の浸透とあんまり変わらない部分も多い。

「俺の」のビジネスモデルとしてのすごさは、飲食業における通常の原価率である3割を遥かに超えた原価率の食事を提供しながら、驚異的な成長を遂げていることだ。

2013年5月31日金曜日

飢餓は遠い国の話ではないかもしれない。

食の終焉/ポール・ロバーツ

この本は現在の「食のシステム」が抱える問題を網羅的に説明してくれる。私たちがスーパーで目にする大量の食料やコンビニに陳列され、時間がくると廃棄される食料がどのような仕組みで生産、調達され、その国境を超えた大きな「食のシステム」がどの程度の安定性を持ったものなのかを教えてくれる。食についての「フラット化する世界」みたいな本、とでも言えるかもしれない。


2013年5月18日土曜日

愛を新鮮な状態に保つにはどうしたらいいのか

 フロー体験 喜びの現象学/ M. チクセントミハイ


この本の中での恋愛についての記述が本当にそうだなー、と思ったのでメモ。

 昔、某人材紹介会社の社長さんが、アメリカ人(男性)と日本人(女性)のカップルについてよくあるケース、として次のようなケースをあげていた。


例えば男性側が弁護士の卵としてがんばっている。専業主婦の奥さんは彼を支えるために家事と子育てに勤しむ。数年たつと夫側は弁護士としてキャリアを詰み、年収もあがる。奥さんは基本的には家にいるので、社会的に成長することはあまりない。そしてそのうち、夫の方に恋人ができ、離婚することになる。


このことが起きる理由の一つとしてチクセント・ミハイの次のように説明が想起される。

2013年5月9日木曜日

何かを成し遂げるにはパワー(権力)が必要。

影響力のマネジメント /ジェフリー・フェファー

この本は就活生に薦めたい。会社に入る前に読んだら良い本だと思う。もしくは、新入社員や入社2〜3年目までの若手の人たち。あなたが大企業に入ったとして、何十年後かにその会社の社長になる確率は最初の配属部署によって影響されるだろうか?


答えはイエス、である。そしてこのことはしばらく社会人をしていれば肌で感じて理解をすることになる。当然、これだけが影響する要素ではないが、一定の影響を与えることは確実だろう。また、環境変化により一つの会社の中で儲かっていた事業部(政治的パワーが高い)が転落し、他の事業部が台頭することも現在では珍しくない。その場合、パワーの源泉はそこに移る。